『スロウハイツの神様』(辻村深月)

村上春樹がいちばん好きで、
それなりに多くの小説を読んできた。


けれど、ここ何年かは、ビジネス書ばかり読んで、
去年は3冊しか小説を読まなかった。


ビジネス書は、
結論をすぐ出す必要があり、
何がいいたハッキリさせる必要があり、
相手を突き動かせるような文体にしなくてはいけない。


求められるのは
「論理的な構成」と「いかに惹きつけるか」


そんな本をたくさん読んできてしまったわけですが、
久しぶりに、
「文学」の奥ゆかしさ、奥深さをハッキリ認識できたと思う。


スロウハイツの神様(上) (講談社文庫) [ 辻村 深月 ]  スロウハイツの神様(下) (講談社文庫) [ 辻村 深月 ]


きっかけは、ふと図書館で手にしただけだった。
新刊だったのかキレイな表紙が印象的で、
なにげなく分厚い小説が読みたくなり、手にとった。


取っ掛かりは正直、入りにくい。


今まで読んできた作風と様子が違った。
文章が独特な部分が見受けられ、入っていくのに苦労した。


でも、そこから話は始まっていた。


登場人物それぞれの小さな出来事が次第にリンクしていく。
無駄な表現は一切ない。


何か印象的な出来事があると、
それは別の場面で使われていく。


その連鎖が見事。
もしかしてあの場面は、そういう意味だったんじゃ?
と途中からワクワクする自分に気づく。
予想は裏切られない。


途中からワクワクとソワソワ。
基本的にハッピー。


久しぶりに突き動かされて、熱中して読んでしまった。


「文学はすばらしい。」


安っぽい言葉かもしれない、でもそれ以外の、なにものでもない。